ヒーロープリンセスと溺愛オオカミ
「レト…!ねぇ!」
声をかけても何も返事をしてくれない。
「結愛ちゃん。この後しっかり説明はするからね、とりあえずレトはしばらく預かるよ。」
「どこに行くんですか、着いて行かせてください!」
「わかったよ、おいで。ただ心苦しい思いをさせてしまうと思うけど…。」
レトのお父さんがそう言い、レトを抱えながらいつもの部屋ではなく、階段を降りて下の階へ足を進めた。
ひんやりと冷たい風が肌をなぞる。
「発作が落ち着くまでは、レトにはここにいてもらうことになるんだ。」
そしてギギギッと重い扉を開け、暗い部屋に入った。
「ごめんね、レトが落ち着くまでだから。」
「えっ……。」
…ジャラジャラといくつかの鎖をレトに繋げている。
「可愛そうだって思ってるだろうけど、俺とラトの2人でもギリギリでこの状態にさせられたんだよ。」
そう言われて気づいたけど、レトのお父さんも傷がたくさんだ…。