そして僕は君に囁く
支店初日。
初めての朝礼で緊張しながら挨拶をした。
男性社員の視線は痛かった。いろんな意味で、ライバルが一人増えたという視線。堪えなきゃ。
一方、女性社員はアイドルを見るような顔で僕を眺めている。
自分で言うのもなんだけど、見た目はそんなに悪くないと思う。学生の頃から、そこそこモテてもいたしね。この視線にはまだ堪えられそうだ。
でも。
そんな中、一人冷めた目で僕を見ている女性(ひと)がいた。僕より十歳ほど年上だろうか。
「凄腕なんて、どうせ嘘なんでしょ?」
僕には彼女の視線がそう言っているように思えてならなかった。
やり手そうな彼女に、たまたま運良く取れた大口注文を見透かされたみたいで、僕は居たたまれない気持ちになった。
この人は絶対すごい人だ。自分のファーストインプレッションを信じ、そんな彼女を勝手に”師”と仰ぐことにする。僕の指導者はこの人しかいない、と密かに心に決めた。