そして僕は君に囁く
そんな時、チャンスはやって来た。
支店の皆さんが、僕の歓迎会を開いてくれたのだ。
師匠以外の女子社員たちは、これでもかという程メイクも服装も気合いが入っていて、申し訳ないけどちょっと引いた。
僕をチラチラと観察して、隣に座りたいってのがよく分かる。なんとかしなくては。
あちらこちらのテーブルで捕まった僕は、なかなか師匠のところへは行けずにいた。そんな僕のもどかしい気持ちに気づいていない師匠は、ご機嫌で箸を口へと運んでいる。
そして腹立たしいことに師匠の周りには男子社員が何人かいて、会話も弾んでいるようだ。僕もそこへ混ぜてくれよ。ウズウズしながら、僕は隣の女子社員に注がれたビールを飲み干した。
幹事の人たちが、時計を気にし始めた。ヤバイ。お開きになってしまうじゃないか。
僕は引き止める女子社員を振り払って、席を移動した。