毒薬は甘い蜜の味。
「ありがとう。その言葉だけで嬉しいのよ。」



「来月には、妻と共に田舎へ戻ります。
社交辞令などではなく、ぜひ、ぜひ、いつでも遊びにいらしてください。」



「うん。松岡さん、体調には十分気を付けるのよ」



いってらっしゃいませと深々と頭を下げる松岡の様子を見ながら、

こんなにも寂しさがこみ上げているのに涙が一滴も零れない自分に驚いた。



「・・私らしいわね」



今なんと、と聞き返す運転手になんでもないと首を振りながら、

私はいつもの様に送迎のリムジンに乗り込んだ。
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