雪に塩
「竺牽捏さんや皆の過去は知らないけど、違うのは分かる。…それに、靱さんは十分親孝行してるよ。」


「え?」



「子供は親より長生きしなきゃ。」



物は嬉しいと思ってくれるのだろうけど、きっと違う。


笑って泣いて、そして何より健康に生きていること。



それが親の願いだと杠は思う。



「弱視に産んでしまったって、私の両親は謝ったの。けど私は滅多に風邪も引かないし、ピアノも弾けて、こうやって靱さんと来れる。これって謝られることじゃない。靱さんのご両親だって同じだよ。」



今だからこそ思うことが出来るのだが、杠には感謝しかない。



借金を背負わせたと後悔する両親と、親孝行出来たかと悩む靱。


そのどちらも相手を思っているのだから、責められるべきことではない。



「そうか…?…そう、だな。」


「うん!」



杠の優しくも重みのある言葉に、靱はそう思うことにした。



「…ごめん、なんか難しい話にしてしまった。」


「ううん、靱さんの話聞けて嬉しかった。私で良ければいつでも話相手になるよ。」



ナンパが発端とはいえこんな場所でする話ではないのに、杠は嫌な顔一つしなかった。
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