雪に塩
「……ありがとう。凄く嬉しい。」



手から伝わる靱からのあたたかい気持ち。


そして、ふわりと風に乗って仄かに香る薔薇。



「……良かった。喜んでもらえて。」



静寂の中に一瞬現した、短く吐いた息。


そして、目の前には一番見たかった笑顔。



「…今日も一緒に帰れる?」


「…!ああ、待っててくれ。」



珍しく杠から誘い、珍しく靱はお喋りだった。




‥‥君の隣の男がオニユリとメハジキを纏い、嫌悪と憎悪が増す。‥‥



「何故だ…?」



‥‥無視されたら死ぬぐらいの僕の気持ちを、ガマズミの様に伝えたはずなのに。‥‥



「何故伝わらない……?」



‥‥オダマキみたく僕は捨てられた恋人か?‥‥



「何故あいつを選ぶ……?」



‥‥イトスギは絶望をパセリは死の前兆を、僕の元へ運んできて。‥‥



「無理矢理させられてるのか?」



‥‥だったらそんな顔をしなくても大丈夫。僕は僕らを引き裂いたあの男に、アザミみたく復讐なんて望まない。‥‥



「助け出してやる。」



‥‥狂気にまみれた葡萄がアネモネを捲き込み、嫉妬の為に無実の犠牲が生まれた瞬間だった。‥‥
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