雪に塩
北より玄武が覆い隠す。
「あんた達、もうすぐ進級予定でしょ?こんなとこで油売ってて大丈夫なの?」



「予定って……。しかも、こんなとこって、仮にも自分の店に言うことじゃないだろ……。」


「一応単位は大丈夫だから問題なしっ!」



頻繁に恋粕で寛ぐ炒市と犬申に、鞠畭はおせっかいと思いつつも釘を刺す。



「苦学生なんだから、留年なんてしないでよ。」


「大丈夫ですよ!私が見張ってますから!」



炒市と離れたくない見熊は、バッチリ目を光らせている。



カランッ…………―――



「いらっしゃい!」



出入口のドアに取り付けたベルが来客を知らせる。



「えっと……林残のボーイさん?」


「藺媒焚さん。どうしたんですか?」



少し焦った様子の靱がそこにいた。



「ユーハちゃん、来ていないか?」


「いや、来てませんけど。杠に何か用事ですか?」



「今日店に来る予定なんだが、いつもの時間になっても来ないんだ。携帯は繋がらないし、付近も探したんだがいなくて。」



恋粕の場所は前に杠から話に聞いていた為、当てが無かった靱はここまで探しに来た。



家も林残の周辺もこの恋粕にも、杠はいなかった。
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