雪に塩
「憑舌さん。私に一体……?」


「ユーハちゃん。ユーハちゃんは今日から僕と一緒に住むんだよ。もう誰も、あの男にも邪魔させない。」



「住むって………それにあの男……?」



鍼蔑の言葉は支離滅裂で、杠の疑問は解決しない。



‥‥孤高の覇者は憐れな独裁者に成り下がる。‥‥



「待ってて。今、お家に帰る準備するからね。」


「え?憑舌さん…!?憑舌さん!」



言うだけ言って憑舌は出ていき、応接室には杠の声だけが響く。



‥‥果実がいつか枯れ逝く、淡く儚いものとも知らずに破滅の道を歩いて逝く。‥‥



「どうしよう………。これって、誘拐されたのよね…私。」



憑舌以外に周辺には誰もいる気配が無く、車の通る音も遠い。


誘拐された理由は分からないが、落ち着く為にも自分の置かれている状況を整理する。



「白杖……は無さそうだし、携帯は鞄の中…だからこれも無理ね…。」



ただ、打開方法が浮かばない。



「靱さん達心配してるだろうし、どうにか連絡しないと…」



危害を加えるつもりは無いのか縛られていなかったので、連絡手段が部屋に無いか恐る恐るではあるも動いてみることにした。
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