雪に塩
「おい!開けろ!」


「開けやがれ、クソオヤジ!」


炒市はガチャガチャとドアノブを回す。


木製とはいえ鍵の掛かったドアは、そう簡単には開かない。



「靱さん!ショー!」



「ユーハちゃん!」


「杠!」



杠はドアの外の靱と炒市に叫ぶ。


助けを求めるように。



「何故だ!?ユーハちゃんを助けるのは僕なんだ!」



杠に対する独占欲が膨らみ過ぎて、イラつく感情を隠す気など微塵もないようだ。



「憑舌さん!開けてください!お願い、開けて…」


「ウルサイっ!」



杠の乞いと抗議を遮るように、近くにあった花瓶を投げ捨てる。


林残でも滅多に目にすることのない気性の荒くなった鍼蔑に、花瓶の割れる音も重なり杠の体はビクリと跳ねる。



「ご、ごめんごめん。大きな声出して。怖かったね。」



恐怖に歪んだ顔とへたり込む杠に、鍼蔑は幼子をあやすように言う。



「けれど、お家に帰れないな。」



騒がしいドアの外など気にせず一人悩む鍼蔑。


靱から自由にすると訴えながら、杠の自由を鍼蔑は剥奪しようとする。



‥‥トリカブトで君は僕に、死の機会を与えてしまった。‥‥
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