雪に塩
お見舞いすら杠は遠慮していたのだが、炒市の学校の話を聞くのは楽しそうで、炒市は学校の話を見舞い代わりにしたのだった。



「杠の為に何かしようとしたんだけど、あいつ気にしたから。」



ボランティアとか盲目の人の支援活動とか一通り調べて杠に聞いたのだが、杠は気にせず前を向いてと言った。


恨まれても仕方がないようなことになってしまったのにも関わらず。



「だから俺は、一生懸命生きることにしたんだ。」



杠に貰ったと言っても過言ではない命。


杠に胸を張って生きていると言えるように。



「後、杠に近付く悪い虫退治とか。」



靱を見ながら、炒市はニヤリと笑う。



「………。ユーハちゃんが迷惑なら近付かないが。」


「違ぇーよ。あのクソオヤジのことだ。つーか悪い虫の自覚あんのかよ。」



少し怒りながらも真面目な靱に、軽く否定しながら炒市は苦笑した。



「誰でもはよくねぇけど、杠がいいなら俺はそれでいい。あんたなら尚更な。」



靱の詳しい人となりは分からないが、杠とのやりとりで杠は心を許している気がした。


少なくとも炒市自身が杠の泣き顔を見たのは、今回が初めてだったから。
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