雪に塩
「だからってわけじゃないんだけど、……………俺はユーハちゃんが好きだ。」



杠の横顔を真っ直ぐ見て靱は自分の秘めたる想いを告白する。



「誰かの様にユーハちゃんの目になるなんて俺はそんな無責任なこと言えないし、目が見えない日常生活がどんなに大変かもよくは分かってない。だけど、俺はユーハちゃんと色々な所に行きたいし、色々な事をしたい。」



靱の言っていることは、不可能ではないが容易でもない。


だが、前向きではあった。



「自分勝手なことを言ってるのは分かってる。だけど……」


「靱さん。」



杠はゆったりとした口調で靱の名を呼ぶ。


覚悟を決めたとはいえ、緊張のあまり途中から早口になっていた靱を落ち着かせるように。



「私はね、靱さんといると私でいられるの。」



盲目で可哀想な人でも盲目のピアニストでもなく、20歳の厭侘杠でいられる。



「全盲の私が将来的に介護無しに生活出来ないことは理解してる。この間だって靱さんやショーに助けて貰ったし。」



今現在どんなに日常生活が出来ていたとしても、酔っ払いや特殊ではあるが鍼蔑のような人物に、やはり杠1人で対処は出来ないからだ。
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