雪に塩
炒市が杠と靱に思いを馳せている頃、2人は病院からの帰り道だった。


病院といっても怪我や病気などではなく、竺牽捏の妻の代わりを兼ねてたまにピアノを弾きに行っている。


今日もその日だった。



「子供達喜んでたな。」


「うん。こっちが元気を貰ったわ。」



ピアノの音に聞き入っていたり、音楽について質問してきたりする子供達の無邪気な感覚は、杠を初心に返してくれる。



「もう、梅の時期ね。ショー、無事に進級出来たかな?」


「もう少ししたら連絡くるんじゃないか?ユーハちゃんが心配してること知ってるんだし。」


「そうね。」




どこからか梅の花の匂いがするのか、杠は会話をしながらも香りを聞いている。



「……今度の休み、梅園に行こうか?」


「うん、行きたい!梅干しあるかな?」



「分からないけど、ユーハちゃんの好物だしあるといいな。それか漬けてもいい。」


「それもいいかも。」



行く前から話に花が咲いた。





行きたい、生きたい。




生きることは大変だ。




だけど、一人じゃないから。



独りじゃないから。





生きたいところまで行けるんだ。
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