雪に塩
ボーイが杠から引き離すも、酔っぱらいの抗議は収まらない。



「おい!あの酔っぱらい、さっさと追い出せ!ユーハちゃんが困ってるだろうが!」


「まあまあ、落ち着いてくださいな。憑舌さん。」



「そうだそうだ!追い出せ!」



憑舌興業の社長、憑舌鍼蔑(ツジタ シンベツ)を始め次々と野次が飛ぶ。



「ど、どうしよう……」


「なんか怖い…」



邃巷と見熊も雰囲気にのまれ、身を縮こませる。




ジャジャジャ、ジャーン♪



「「っ!!」」



荒ぶる雰囲気を一変させたのは、杠のピアノだった。



「お客様、当店はお客様が求めるような店ではございません。どうぞ他をお当たりください。」



杠のピアノに気が削がれた酔っぱらいに竺牽捏は毅然と対応し、ボーイと共に外へ連れ出した。



「ごめんね、怖がらせちゃったみたいで。でも、あれは珍しいことだから。また来てね。」



「ううん、店長さんも謝ってたけど大丈夫よ。」


「そうそう。確かに怖かったけど、お店は素敵だし、杠ちゃんの演奏だって聞きたいし、また来るよ。」



「こう言ってるし、心配すんな。」



「うん、ありがとう。」
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