雪に塩
南より朱雀が舞い降りる。
「フラワーフェスティバル?」


「ああ…入場券を貰ったんだ。……ぁーその…、良かったら一緒に行かないか?場所、ちょっと遠いんだけど…」



至極有名な花から珍しい花まで見ることが出来、露店やお土産コーナーもある花祭りのことだ。



「うん、行きたい!私、そういう所行ったことないの。」


「良かった……。家、迎えに行くから。」



嬉しそうにはしゃぐ杠を見て、靱はホッとした。



「どうだった?」


「行きたいって…。ありがとうございます。」



「いやいや~俺、花に全然興味ないし、貰いもんだしさ。ユーハちゃんと楽しんでこいよ。」


「はい。」



嬉しそうにはにかんで開店の準備に戻った靱を、竺牽捏は親のような心境で見る。



人間関係にぶきっちょな靱が杠が来てからというもの、たどたどしくも話し掛けたり家まで送ったりと、その行動はかなり積極的だ。



靱本人は言わないしこちらも聞かないが、杠に特別な感情があることは見てとれる。


杠も迷惑そうにはしてないようだし、寧ろくっつけたくなってしまう。



「手のかかる奴だよな、全く。」



そう言っても、竺牽捏は楽しそうに笑みを浮かべた。
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