心外だな-だって世界はこんなにも-





突然だが、もしかすると、祭は俺に恋をしたんじゃないかと思う。



この反応は、絶対におかしい。まるで、好きな人の前で、空回りな行動をする女の子じゃないか。



思い当たる節は、ある。昨日のスマホを探し出したことだったり、手を引いて一緒に走ったり……。



ああ、たこ焼きで間接キスもしたか。「あーん」というやつもしたか。



でも、もちろん確証はない。祭は普通の女子とは違う、変わった女子だ。青春を知らない祭は恋も知らない。



きっと「初恋の人は?」と訊けば、「パパ」と答えるか「歌のおにいさん」と答えるだろう。ちなみに俺の初恋の相手は「歌のおねえさん」だ。いや、俺に限らず、男子は全員、初恋の相手は「歌のおねえさん」か、「お天気おねえさん」だろう。



「ねえ、聡くん……。」



こんなことを考えていただけに、もしかして告白? と思ってしまった俺は、祭に負けないくらいの動揺を隠せない返事をしてしまった。



「聡くんは、過去に戻れたら何したい?」



……邪な考えをしていた自分が恥ずかしくなった。




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