心外だな-だって世界はこんなにも-





私はため息を一つし、勢いよくドアを開けた。



____バンッ!



ドアは勢いよく兄貴の顔にぶつかって、その瞬間、「あひゃんっ!」と何ともマヌケで気持ちの悪い声が聞こえた。



その声の主はうずくまっていて、じたばたと。まるで釣り上げたばかりのスズキのように元気のいいこと、美味そうなこと。



「痛えー。痛えーよー、美紀ちゅあん……。」



「何が『美紀ちゅあん……。』だよ、馬鹿兄貴! 入っていいのはご飯を運ぶときだけで、その時は必ずノックをすることっていつもいつもいっつも言ってるだろ!」



兄貴は「面目ない、面目ない。」とヘラヘラ笑いながら、額を擦っている。足元には、中華丼ときんぴられんこんとお茶が乗ったお盆が置かれてあり、これが今日の夕飯のメニューらしい。



珍しい。



「へえー、今夜は中華丼なんだ?」



「そう。お兄ちゃんも珍しいと思ったんだよ。うちの母さんが中華丼作るのって、絶対に八宝菜の次の日だろ? お兄ちゃん、思うんだけどさ、順番入れ替えただけで、多分、明日が八宝菜なんじゃないかって。」



私はお盆を持ち上げて、それを部屋に運んだ。なぜかそのタイミングで兄貴も私の部屋に入ってきた。




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