心外だな-だって世界はこんなにも-
彼女は俺の方ばかり見ていて、通話に集中していなかった。それどころか、俺に直接何かを言いたいような目をしている。
何も考えず、のほほんとしている俺に対しての嫌悪にも見える。自分が一番不幸だと思い込んでいる俺に対して怒っているようにも見える。だらっと続く日常の素晴らしさに気付けない俺に呆れているようにも見える。
「ねえ、退けよね! わかるー! 退けってね!」
しかも、このさっきから多用する「退け」という言葉。これは、きっと二つの意味が含まれている。自分だけが不幸だと思って、悩んでいることに酔っている俺に対しての怒りと____
____羨ましさが混ざり合って、素直になれないでいる。
「どーけ! どーけ! どぉぉぉけぇぇぇぇ!!」
スマホから耳を話して、俺に直接訴えかけている。ぶつけている。確かに俺は、だらっと続く日常をつまらないと思い込んでいた。そんなだらっと続く日常すら与えられない人のことなんて考えたこともなかった。
見ようともしていなかった。
でも、俺は変わったのだ。そして、学んだのだ。
だらっと続く日常の素晴らしさを。
過去は変えられなくても、未来は作れるということを。
どんなに不幸な状況でも、気持ちの持ちようで、面白くできることを俺は知っているのだ。
ある一人の少女から教えてもらったから……。
だから、
今度は俺の番だ。俺が彼女を救ってあげる番なんだ。