心外だな-だって世界はこんなにも-
俺はそんな祭を無視して、本を読み進めた。友達はいらない。入院患者同士仲良くしようなんて、くだらない。それに、こんなところに長居するつもりはさらさらない。
しかし、祭は俺の気持ちを汲み取ってくれなかった。横から本を覗き込み、ニコッと笑う。煩わしくなって、身体ごと背けるが、それでも懲りずに覗き込もうとする。胸が当たる。大きくはないが、胸は胸だ。
「気が散るんだけど……。」
「ねえ、それ、何読んでるの?」
「なんでもいいだろ。」
「まさか、エロ本?」
思わず転げ落ちそうになった。
「ちげーよ!」
「じゃあ教えてくれてもいいじゃん! それとも、言えないやーつ?」
俺は意味もなく狼狽した。その仕草で感じ取ったのか、祭は「わー、やっぱりエロ本なんだ……。」と軽蔑した目で俺を見た。