心外だな-だって世界はこんなにも-
「それで、どう? 順調?」
兄貴は、机の上に置いてあった私の原稿を手に取った。
「ちょ! 返してよ!」
「いいじゃん。減るもんじゃないし。」
私がどんなに背伸びをしても、どんなにジャンプをしても、兄貴の180ある身長には勝てない。
フェイントして奪い返そうとするが、そのフェイントもバスケで培った勘の良さで、すべて読まれてしまう。こうなると、私の数少ない体力が減るのを待つだけで、諦めるしかない。
「美紀ちゃん……『小説家になるんだ!』って言って、それから部屋にこもるようになって、かれこれ……5年になるか?」
「それが何?」
「……それなのに、美紀ちゃん、すげーよ。うん、すごい。輝いてるよ。さすが、お兄ちゃんの妹だ。」
そう言って、兄貴は私の目の前に原稿を広げた。
「すごいぜ。驚きの白さだぜ。いやあ、人には何か一つは取り柄があると思ってはいたけど、美紀ちゃん。小説家に向いてないよ、うん。」
「うっさいなー、返してよ!」
私は原稿をひったくった。そんなこと言われなくてもわかってる。