Last Prisoner 教師を愛した私
たとえそれが嘘だとしても嬉しいよ、先生。

ずっと心にしまっておきたい、その言葉を。

大切に大切に、卵を温めるみたいに。

時計を見ると、ちょうど昼休みの時間だった。

「もう呼ばれた?」

「ううん、まだ」

先生は私の返事を待たずに私の隣の席に腰を下ろして、

「心配すんなって」

って頭をくしゃっと撫でた。

先生の手っていつも温かいね。

こんなに温かかったら冬場にカイロとかいらないね。

先生の手で温めてもらえる人は、いいな…。


先生は4、5分座っていると、時計を見て、

「やべっ、俺、5時間目授業あるんだった!」

先生の慌てぶりがおかしくてくすくす笑うと、

「なんだよー、笑うなこの小娘が!」

と満面の笑みを浮かべながら私の額をピンとはじいた。

いたぁい、と私が言うと、

「ざまあみろ」

と笑いながら言ってから、

「気をつけて帰れよな」
と行ってしまった。

先生、そんなこと他の生徒にもするの?

私だけ、なんて思うのは思い上がりなのかな?

でも今だけはそう思っていても、いいよね?

私は胸に手を当てて、先生の言葉を温めていた。
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