Last Prisoner 教師を愛した私
「うん」

「しっかりしてそうに見えて意外と抜けてるな、お前」

先生の笑い声がした。

しっかりなんかしてないよ…。

今だってちょうど、寂しいって思ってたんだから。

一人で、寂しいな、って。

「で、どうする。学校に来たとき返すか?ないと不便だもんな」

「ん…」

先生、今すぐ先生に会いたいよ。

会って顔をみればきっと少しは寂しさが紛れる気がした。

「先生」

「うん」

「今から取りに行ってもいいかな」

「いや、俺は別に構わないけど」

「先生、今どこ」

「どこって…ここ、どこだ?」

思わずくすくす笑ってしまう。

しっかりしてよ、先生!
「悪い、ちょっと職員室でビール一杯のんで酔っ払ってんだ、俺」

先生はけらけら笑う。

その声も好き、ずっと聞いていたい。

先生、笑って?

「わかった、あの商店街みたいなとこ。町で一番大きいやつ」

「じゃあ、映画館の前で待ってて。今からすぐに取りに行くから」

「おー、気をつけてな」
先生は電話を切った。


今から先生に会いに行くんだ。

先生の顔が見られる。

ずっと今日一日、私の頭の中を占領していた、先生の笑顔に会いに。
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