Last Prisoner 教師を愛した私

S2 七夕祭り

外に出ると空気がとても心地よかった。

風は激しさをなくし、凪いでいた。

タクシーを拾い、行き先を告げる。

窓から外を見るたび、先生に近づいている気がして、すごく嬉しい。

大好きだよ、先生。

何もかも、全部私のものだったらいいのに。


街に着くと、街中はとても混み合っていた。

人ごみを掻き分けながら、映画館を目指す。

すれ違う子供たちは浴衣を着て、手に金魚の入った袋を抱えて。

ああ、今日は七夕祭りなんだね。

大きな七夕飾りを見て思い出す。

露天がたくさん出ていた。

ベビーカステラ。

お好み焼き。

風船。

金魚すくい。

どれもとても魅力的。

私は小さい頃、まだ家族が幸せだった頃を思い出していた。

あの頃はよく家族でこの祭りに来たっけ。

お父さんが私を肩車して、お母さんは浴衣を着て。

思わず涙がこぼれそうになる。

お父さん…。

心の中で何かが渦巻いているような感じがした。
忘れよう、忘れよう。

もう過去のことなんだから。


先生を探しながら歩いていると、和菓子屋の前に人だかりができていた。
なんだろう、と覗くと、みんな短冊に願い事を書いている。
< 36 / 96 >

この作品をシェア

pagetop