Last Prisoner 教師を愛した私
先生は私の頭に手を載せて、2回ぽんぽんと叩くと、狐の仮面を私の顔にゆっくりかけた。

泣いてるとこ、隠しとけ。

先生はそうささやくように言った。

ますます涙が止まらない。

やだよう、先生。

ずっと一緒に、そばにいて?


仮面をつけたまま先生と向き合う。

涙を指で先生が拭ってくれた。


また風が吹き出してきたようだ。

私の巻いた髪が夏の風にふわりと踊る。

仮面をつけたまま、私は言った。

「先生…大好き…ずっと、そばにいたい」

涙を拭った後が乾いて、ひりひりする。

先生は一瞬、悲しそうに眉根を寄せ、

「…ごめん。俺には家族がいる。守らなきゃいけない家族が」

わかってたよ、先生。

先生の優しさは特別なものなんかじゃなく、誰にでも平等に分け与えられているものなんだ、って。

でも、でも、でも…。

私はいたたまれなくなって、

「うん、そうだよね」

とだけつぶやくと、先生を置いて駆け出した。

手の中で金魚のビニールが揺れている。

夢中で走った。

がむしゃらに、そして忘れるために。


街からだいぶ離れたところまで来て、私は足を休めた。
< 39 / 96 >

この作品をシェア

pagetop