Last Prisoner 教師を愛した私
先生は想像していたよりも、甘えんぼうで。

寂しがりやなんだ。

とても娘がいるとは思えない。

でもそんな先生がますます好きになってる私。


「あのメガネのお客、神宮寺さんの彼氏でしょ」
同僚の金川さんが私に言った。

金川さんは大学2年生。
少し小柄だ。

「えっ、違いますよ!?」
私は慌てて否定。

ばれたらマズイ。

絶対にうん、なんて言えない。

「しかもあの人、北村女子の教師だったような気がするんだけど」

えっ!?

なんで知ってるの?!

「俺の妹、北村女子の1年なんだけど、文化祭行ったとき、あの人見た気がするんだよな」

「き、気のせいじゃないですか」

「いや、俺の勘は意外と当たるんだよな。ま、でも安心して。誰にも言うつもりないから」

はぁ、危ない危ない。

学校から離れてるから大丈夫かな、って思ってたけど、案外世間は狭い。

先生を見ていたら、トレーをもって立ち上がった。

あっ、帰るんだ。

私はカウンターの中からでて、トレーを受け取りに行く。

「お客様、トレーをお預かりします」

先生はそんな私を見て、くくくく、と笑った。
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