Last Prisoner 教師を愛した私
先生は私を抱きしめたまま、そうつぶやいた。

車に戻ると、先生は、

「やべ、もう11時だ。生徒をこんな時間まで拘束してたなんて、俺もうほんとに教師失格だわ」

「先生、もうとっくに教師じゃないじゃん」

「それもそうだ」

私と一つになったときから、私と先生は教師と生徒じゃなくなったんだ。
一人の男と、女。

なんか演歌のせりふみたいだなぁ、と自分の中で考えていると、

「でも、俺、舞を卒業式で送り出すのが夢なんだ」

車を走らせながら、先生は言う。

どうして?

そう尋ねる私に先生は、
「卒業証書を読み上げるときに、舞の名前を呼びたいんだ。みんなの前で」

「へぇー」

「それで教師っぽく『卒業おめでとう』とか言って握手とかすんの」

「先生って意外とロマンチストだよね」

先生は私の額を人差し指ではじくと、

「意外とはなんだよー!舞っ」

と笑った。

その笑顔は今まで見ていた寂しそうな笑顔じゃなくて。

なんだか希望に満ち溢れたような笑顔に見えた。
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