Last Prisoner 教師を愛した私
先生が包んだのか、あちこち、箱の色が見えている。

思わず笑みがこぼれる。
きっと、私のために一生懸命ラッピングしてくれたんだね。

先生、不器用なのに。

私、知ってるよ。

香澄ちゃんが熱を出したときに、職員室で鶴を折っていたこと。

黒板に文字を書こうとすると、握力が強すぎて、すぐにチョークを折ってしまうこと。

香澄ちゃんのお守りを作るために、手芸部の生徒に裁縫を教わっていたこと。

そんな先生だから、私は好きになったんだよ。

不器用だけど、すごく人を想える人。

そんな素敵な人に私はめぐりあったんだね。


「あけても、いい?」

私が聞くと、先生は照れくさそうに、

「おー」

と言って窓外に視線を移した。

リボンと包装紙をはがすと、中から箱が出てきた。

「ピッチ?」

中から出てきた箱はPHSの箱だった。

「ああ、なんか同じ機種同士なら通話料無料とかいうやつ」

「でも私、携帯持ってるよ?」

「そのピッチを舞専用のピッチにして欲しい。俺が舞に電話とかメールするときとか、舞から俺に電話したりメールするためのピッチ」

「私と、先生だけ…?」
「そう、俺ら専用のピッチ」
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