Last Prisoner 教師を愛した私
わたしは黙って先生の体に腕を回した。

「先生、嬉しいよ…」

涙はなんとかこらえた。
先生の前で泣いてばっかりだもんね、私。

「ただ、ルールを作っておくべきだと思う」

「うん…」

「そのピッチは学校では絶対に使わないこと」

「そうだね、誰かに見られたら、いけないもんね」

「ああ、そう。それと」
「うん」

「辛いときには必ず連絡してくること。我慢するなよ」

先生の優しさがすごく染みてきて、鼻の奥がきな臭くなってきた。

先生、私のこと、本当に大切にしてくれるんだね。

今までそんな人に出会ったこと、私はないよ。

「じゃあ、そういう決まりにしよう」

「ん…」

「俺もさすがにここまで遅くなって、かみさんに怒られるから、また学校の補習でな」

「うん」

私が目を瞑ると先生は私の唇に、人差し指で触れた後、自分の唇を重ねた。


星の落ちる夜だった。
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