Last Prisoner 教師を愛した私
「ああ、舞。まだ起きてたの」

「うん、まぁ」

「そうよね、舞は受験生なんだから勉強も大変よね」

「うん。それより、今日もお酒、飲んできたの…」

「うん、お付き合いでねー」

「お母さん、お酒、苦手じゃない」

「仕方ないわよ、それが仕事なんだから」

私は釈然としない気分で母親の背中におやすみ、と声をかけると、また自分の部屋に戻った。


布団の中で耳を塞いでいた。

母親がトイレでもどしている音がする。

気を遣っているのか、何度も水を流しているようだ。

お母さん、もうそんな仕事、辞めちゃいなよ。

もともと、お母さんみたいなお嬢様育ちには向いてないんだよ。

私を大学に入れたいなんて思わなければ、別の仕事に転職だってできるのに。

でもお母さんが私を唯一の生きがいにしているのを、私は知っている。

お父さんが亡くなってから、ずっと。

舞、お父さんのような人になってはいけません。
あなたは優秀だからきっといい大学に入れるはずよ。

そんな言葉を幾度となく聞かされてきた。

でもお母さん、私が期待に応える前に、お母さんがダメになっちゃうよ?
お母さんがいなくなったら私、一人ぼっちになっちゃうよ…。
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