Last Prisoner 教師を愛した私
背が高くて、メガネをかけた男の人の姿だった。
なんか先生に似てるなぁ。

私は目があまりよくない上に、コンタクトをしていなかったので、それが本当に先生だと認識するまで、少しの時間を要した。

先生はポロシャツにダメージデニムを履いていて、左側に香澄ちゃんがいた。

そして、奥さんがワゴンの中を一生懸命覗いている。

真剣なまなざしだった。
先生…。

会えた喜びと一抹のせつなさを抱えて、私は先生を見つめていた。

先生が左に向けていた顔を私のほうに向けた。

少し驚いたように、目を開いてから、嬉しそうに笑みを浮かべた。

私のほうがどぎまぎして、視線をそらしてしまったくらいだ。

先生は奥さんと2、3言話して、香澄ちゃんを奥さんに任せると、私に向かって歩いてきた。

えっ、先生。

なんで??

私が必死でどうしよう、と思っていると、先生はすれ違いざまに、私の額にキスをした。

温かなキスだった。

私は驚いて、先生を見た。

先生はとまらずそのまま歩いていったけれど、振り返って、口を動かした。


「アイシテル」


そう動いていた。
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