Last Prisoner 教師を愛した私
先生を好きになれたことを、愛されたことを私は誇りに思いたい。

だから、私は先生のそばにいたいんだ。

私が先生のほうを見ると、先生は、

「舞、あんなの気にすんなよ。人の噂も何とか、っていうじゃん」

「先生…」

「俺は、もう覚悟決まってるから」

「覚悟?」

「ああ、まだどんな覚悟かは舞に秘密だけどな」
先生は笑って私の頭を撫でた。

でも目が悲しそうに切なそうにかげっていて。

それが何よりも、悲しかった。


私たちが黙って見つめ合っていると、放送が流れた。

「えー、新村先生。吹奏楽部のことで話があるので、至急職員室に戻ってください」

私は先生のほうを見ながら、

「先生、行かなくちゃ」
「ああ、なんか舞を置いていくのは心苦しいけど」

私は頭を横にブンブンと振った。

そんなこと言わないで、先生。

私の前では虚勢を張ったり、強く見せようとしたりなんてしないで。

ありのままの先生を好きでいたい。

「じゃ、家に帰りなさい。後で連絡する」

「…うん」

先生は私の額にキスをすると、頬に触れていた左手を離した。

熱が逃げていく感じが、なんだか怖くて。
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