Last Prisoner 教師を愛した私
「あーなんか将来が楽しみになってきた」

「ねっ」

そのマサミが、進学を諦めて就職する。


私にとってはとてもショックだった。

それでもきっと一番悲しいのはマサミなのだから、と自分に言い聞かせて、私は言葉を飲み込んだ。

「そっか、進学しないんだね」

「うん、なんかすっごく気楽」

マサミ、目が真っ赤だよ。

そんなに強がらなくていいんだよ。

マサミ、本当は進学したいんでしょ?

カリスマ的な美容師になりたいんでしょ?

私のウェディングのときにヘアアレンジとネイルアートをしてあげたい、って言ってくれたじゃない。

それなのに、神様は、意地悪だね。

私は言葉を継げられずに黙ってマサミの手を握っていた。

小さく震えるマサミの手はからからに乾燥していて。

マサミの心も、乾ききっているんじゃないかと思うと、私は胸が痛かった。


授業が始まろうとしていた。

1時間目は体育だった。
朝から体育はきついなー、と思っていると、マサミも同じことを思っていたらしく、

「ねぇ、舞、学校をフケて行きたいところがあるんだけど」
< 93 / 96 >

この作品をシェア

pagetop