Last Prisoner 教師を愛した私
でも私たちは奪い合い、ぶつかり合ってしまう。
何故なんだろう。

子供の頃はケンカはいけないとか、道徳は大事だとか習うのに、大人になるとそれを忘れてしまう。

みんなが仲良しの世界なんて確かに気持ち悪いけれど、人が人を傷つける世界も間違っていると私は思う。

みんな平等に幸福であるべきなんだ。

でも日本という平和な国で最低限の幸せを保証された私たちは、そのことを忘れてしまっている。
平和ボケしてしまっているんだ。

もし、私だって、あんな過去を背負っていなかったら、堂々と生きられるのかもしれない。

誰にも言えない、私の過去。

父親との、秘密。

思い返すと、恐怖で体が震えだした。

それに気づいたマサミが、言った。

「舞、寒い?」

「ううん、ちょっと寒いギャグを思いついただけ」

「何」

「いやだ、言わない。恥ずかしすぎる」

「まぁ、いいよ」

マサミは自転車を立ちながらこぎ始めた。

それから坂の上にある、美容室の前で止まった。
「マサミの行きたいって言ってたのは、ここなの?」

「うん、ちょっとね」

私たちは美容室のドアを開けて中に入った。
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