教師なんて…




私のマンションまできた。



また私、独りに戻るんだ。



慣れているはずなのに、涙が出そうになった。




『帰んないの?


どうした?』





優しい言葉を私の顔を見ながら言う先生。




『言いたいことがあったら言っていいんだよ



我慢しなくてももういいからね』





「1人……」




うんっ?と先生は私の顔を覗いてくる。




「やだ…怖い…」




『1人になるのが嫌で、家に帰るのが怖い?』




私は先生の言葉に幼子のように頷いた。







「おうちに戻ってお泊まりセット持っておいで」




頭に手を乗せて、優しく言われて。





私はまるで自分が自分じゃないかのように



お泊まりセットを用意した。






『いいか、俺んちは普通よりボロい


アパートだからな。



覚悟しとけよ。』






そう自虐的な言葉を吐くと、



私のマンションから車を出した。






ありがとう、先生。




ごめんなさい、ワガママ言って。





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