彼の瞳に独占されています
◇失恋の傷を癒すもの
優しくて、頼りがいがあって、包容力と経済力を兼ね備えている。容姿は人並みでも、スーツが似合えば良し。
……それが、私、長谷川 萌(はせがわ もえ)が求める理想の男性像。
老舗デパートの紳士服売場で働いている私は、仕事柄、スーツに関しては目が肥えている。
スーツフェチとでも言おうか、完璧な着こなしをする人に出逢うとキュンとしてしまうのだ。自分に一番合ったスーツを着こなしている人は、なかなか少ないから。
そんな私の目の前で今、一流IT企業に勤める五歳年上の浮名(うきな)さんが、高級ホテルのスーペリアルームにスーツを脱ぎ捨てていく。
シワになっちゃう……なんて思いながらも、ネクタイを緩める仕草や、露わになる筋肉質な素肌に目を奪われてしまって。
甘く微笑んだ彼に、引き寄せられて濃密なキスを落とされたら、もう他のことはどうでもいい。
戦闘服と言われるそれを脱いで、無防備だけど逞しい身体に求められるこの瞬間が好き。自分が女だと感じられる、至福の時だから……。
今日も目一杯愛されようと、彼の首にしがみつきながら、ベッドに優しく押し倒された。
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