彼の瞳に独占されています
それに、萌が俺を頼ってくれないことが、少し寂しかったせいもあると思う。何かあるとすぐ俺に相談してくるくせに、最近はいろいろと溜め込んでいるように見えたから。

何があったか話してもらいたいというより、俺の存在を必要としてもらいたかった。

この胸で泣いたあの時のように、遠慮せず俺に寄りかかってくれれば、元気を与えてやることくらいはできるはずだから。


 *


そうして、少々強引に連れ出した今日。話を聞いていると、萌が中身のない恋ばかりしているから、弥生ちゃんに説教されたのだろうと、なんとなくわかった。

というか、これまでの恋愛は本気じゃなかったんだな。薄々そんな気はしていたから、やはりという感じだが。

その中に、俺とのことも含まれているのか……。


「俺のことも?」


つい口にしてしまうと、彼女の表情が強張った。

俺のことなんて友達としか思っていないとわかりきっているのに、なぜこんなことを聞いてしまったのだろう。

少し後悔して、夕日が沈んでいく水平線を眺めていたときだった。


「……本気、だったよ」


波の音に混ざって、思いもよらない言葉が聞こえ、無意識に目線は彼女へと向く。


「淳一のことだけは」


くっきりとした二重の大きな瞳は、まっすぐ俺を捉えていた。

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