彼の瞳に独占されています
俺と萌の間には、十年をかけて築き上げられた、友情という一言ではまとめられない複雑で深い絆がある。

それを壊したくはなくて尻込みしていたが、そんなに簡単には壊せないものだとも思える。

あいつがどんな反応をするかわからない。もしかしたら、想いを伝えた方が後悔することになるかもしれない。

だが、もう隠していたくはないんだ。誰よりも、彼女を愛しく想っているということを──。


焦燥に駆られながら、バイクを停めたのは萌のアパートの駐車場。ヘルメットを取り、明かりがついている二階の角部屋を見上げる。

さっき、あの上司とはカフェでどんな話をしたのだろう。今度デートをする約束か、それとも、お互いの想いを確認し合ったか……。

もう遅いかもしれない。それでも、決心は揺らがない。


「……親友ごっこも、ヘタレも卒業だ」


嘲笑とともに自虐的な独り言をぽつりとこぼし、彼女のもとに向かって一歩を踏み出す。

階段を上り、すっかり慣れた部屋の前に来ると、ひとつ深呼吸をしてインターホンに手を伸ばした。




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