彼の瞳に独占されています
緊張から、水を差すようなことを言ってしまう自分に辟易するけれど、それは本心でもある。

“私だって女なんだから”なんて自分で言ってしまうと、急激に虚しさが襲ってきて、少し興奮が治まる。


「……女としてなんて、今さら見れないか。付き合ってた時ですら、淳一はなんにもしてこなかったもんね。十年も友達やってれば、全然意識なんかしないよね」


彼から目を逸らし、渇いた笑いを漏らしながら自嘲した、その時。

──突然、肩を押される感覚がして、視界がぐるっと反転する。そして、ドンッと背中に衝撃を受けた。

一瞬の出来事に驚き、思わず閉じた目を開けると、天井をバックにして私を覗き込む淳一がいる。

カーペットの上に仰向けになる私の横に手をついた彼は、猛獣のように鋭く、けれど切なさも含んだ瞳で私を捕らえていた。


な……な、に? なんで、こんな状況に!?

わけがわからず、テンパって目を白黒させる私に、彼が言う。


「……こういうふうにしたいって思ってるよ」


熱をはらんだ声が紡がれ、ドキン!と大きく心臓が突き動かされる。


「俺はずっと、お前の親友を気取ってただけだった」


本心らしき片鱗を露わにし始める彼に、私は目を見開く。


「じゅん、い──」

「好きだ」

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