彼の瞳に独占されています
それは懇願しているようにも聞こえ、ぎゅうっと胸が締めつけられた。

淳一の気持ちも知らず、ずっと恋愛相談していた私は、彼のことも傷つけていたのかもしれない。

本当にごめん。あんなことは金輪際しないから。


「……もう、友達には戻れないね」


ぽつりと私の口からこぼれた言葉に、淳一の表情が一瞬とても悲しげなものに変わった。

その直後、私は思い切って両手を彼の首に回す。そのままぐいっと自分に引き寄せ──

ずっと欲しかった唇に、私からキスをした。

ほんの数秒、感じたぬくもりを離してゆっくり目を開くと、呆然としている淳一が映る。


「も、え……」

「私が本気で好きなのは、淳一だけだよ。本当は、ずっとずっと好きだったよ」


十年分の想いを告げると、目尻からポロリと涙がこぼれ落ちた。

やっと言うことができた安堵感と、両想いだったことの嬉しさで胸がいっぱいになりながら、長い間ためらっていたお願いをする。


「もう一度、私を恋人にして」


その瞬間、込み上げる何かを堪えるように唇を結んだ彼の顔が近づき、きつく抱きしめられた。

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