彼の瞳に独占されています
私と同じように、淳一も意識しすぎて、軽々しくスキンシップができなかったということだよね?

私のこと、女として見ていないわけじゃなかったんだ……。

そう気づいたら、甘い雰囲気から逃げてしまっていた過去も、『もう急に家に来ないで』と言ってしまったついさっきも、失礼だったと思う。

私は反省して、正座をしたまま頭を下げた。


「ごめん……! あの、高校の時はすごく恥ずかしくて、拒否しちゃっただけなの。初めて好きになったのが淳一だったし、どうしていいかわかんなくて」


純情だった自分を思い返しつつ、淳一のことが好きだからこそとってしまった態度だったのだということを、必死で訴える。


「今だって、料理しながらビール飲んでるとことか、だらしない格好してるの見られたくなかったのに、突然上がり込んでくるから、コイツ人の気も知らないで!って思って……」


思ったことをそのまま一思いに言い放っていると、淳一がクスクスと笑い始める。

どこか嬉しそうに笑う彼は、こちらに手を伸ばして、私を再びぎゅっと抱きしめた。


「乙女な萌も、ほんと可愛い」


耳元で囁かれた一言で、胸がキュンと鳴る。まさか、淳一に“可愛い”と言われる日が来るなんて。

< 117 / 124 >

この作品をシェア

pagetop