彼の瞳に独占されています
昨日は『夜勤行ってくるかな』なんて言っていたけど、この時間にいるってことは、やっぱりあれはテキトーな発言だったのね。

まぁそんなことはどうでもいいけれど、やっぱり一言電話のお礼は言っておこう。

そう思って口を開きかけた時、淳一が先に言葉を発した。


「思ったより元気そうだな」


安堵したような表情で言われ、心配してくれていたのかと思うと少し心があったかくなる。


「おかげさまで。今朝もホテルの朝食バイキングでお腹いっぱい食べてきたし」


まったく無理をしていない笑顔を見せ、強がりではなくそう言うと、淳一は何かを考えるように腕を組んで言う。


「……高級ホテルのレストランで、萌がひとりでがっついてるとこ想像すると、なんか頑張ろって思うわ」

「悪かったわね、不憫な女で」


口の端をヒクつかせながら即座に自虐ツッコミを入れた。

たしかにね、ひとり開き直って朝から食べまくってる姿は、世のおひとり様達に勇気を与えるのかもしれないけどね。

微妙な気分になっていると、軽く笑った淳一の手がこちらに伸びてくる。


「そーいうお前だからほっとけないんだよな、俺は」


ぽん、と頭に手を乗せられ、何気なくそんな一言を口にされて、トクンと心臓が動いた。

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