彼の瞳に独占されています
何でこいつは、不意に胸キュンさせてくるんだろうか……。

上目遣いで見つめる私を見下ろす彼は、ちょっぴり意地悪っぽく口角を上げる。


「早く俺を安心させてくれよ」

「あんた私の父親ですか」

「マブダチだろ」


笑いながら私のツッコミを訂正し、私から離れていく淳一。

その瞬間、胸にチクリとした違和感を覚えた。けれど、それはすぐに消えていく。


「言い方古いよ……」


コツコツと革靴を鳴らしてフロアを歩き出す後ろ姿を見送りながら、ボソッと呟いた。

私達は親友。それは、今までもこれからもきっと変わることはないし、それでいいのだ。


すると、淳一が歩く前方から、長い髪をさらさらとなびかせてこちらにやってくる弥生ちゃんの姿が目に入る。

手を振ると、彼女も手を振り返してくれたけれど、私のもとへ来る前に淳一の隣で足を止めた。


「淳一さん! お疲れ様です」


にこりと笑って、警官のように敬礼してみせる彼女は、とっても愛くるしい。

淳一もきっと鼻の下を伸ばしたいはずだけど、当然ながら勤務中の姿勢を崩さず、爽やかな笑顔を向ける。


「お疲れ様。これから萌とランチ?」

「そうです。淳一さんも今度また一緒に飲みに行きましょうね!」

「お、いーねー」

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