彼の瞳に独占されています
楽しげなふたりの会話は、社交辞令ではない。私達三人で食事をすることもたまにあるから。

弥生ちゃんと淳一も気が合うようだけど、なぜかふたりきりでどこかへ行ったりはしないのよね……。お似合いだけどな。

微笑ましくふたりを眺めていると、すぐに弥生ちゃんは私のもとへやってくる。「行きましょうか!」と言う彼女に頷き、淳一に軽く手を振って別れた。



社食へ向かうと、フードコートのようにテーブルが並ぶそこには、まだたくさんの社員がいる。

お互い日替わりランチのチキン南蛮が乗ったトレーを持って、窓際の四人掛けの席に座った。

さっそく両手を合わせた弥生ちゃんは、“いただきます”をするのかと思いきや。


「先輩……ご愁傷様です」


渋い顔をして頭を下げるものだから、「勝手に私を殺すんじゃない」と言って顔をしかめる。

ここに来るまでの間に、浮名さんとのことは話していたから、彼女はこれでも一応私を哀れんでいるのだ。

さっさとお味噌汁を啜る私に、弥生ちゃんは浮かない表情で話し出す。


「あたし、実はちょっと心配してたんです。先輩付き合ったばっかりなのによくあたしと飲んでたから、そんなに忙しくて会えない彼氏ってなんか怪しいなって。でもまさか先輩がセフレだったとは……」

「それ以後禁句ね」

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