彼の瞳に独占されています
ビシッと言い放ち、小鉢に入ったしば漬けをパリパリと噛み砕く。弥生ちゃんは素直に「ハイ」と頷いて、料理に手をつけ始めた。


「私もたいして好きじゃなかったんだなって、今実感してるのよ。だからこれでよかったの。未練もないし、自分の浅はかさもよーくわかったし」


自分でも驚くほどさっぱりした気持ちでそう言うと、弥生ちゃんは箸を動かしながら苦笑する。


「先輩、付き合う相手に変なこだわりがありますもんね~。経済力は、まぁ結婚するとなればある程度必要だけど、スーツが似合うってだけで惹かれちゃうのはなんとかした方が……」

「それも十分反省してます」


歯に衣着せぬ物言いをする彼女に痛いところばかり突かれて、私は頭を垂れた。二歳年下の後輩に諭される私、本当にふがいない……。

ため息を吐き出し、嘲笑を浮かべる。


「上辺の条件が揃ってても、肝心な“愛”がない、ウッキーナみたいな人もいるって身に染みてわかったよ」

「何ですか、その変なあだ名」

「淳一の受け売り」


あぁ、と納得したように笑った弥生ちゃんは、ふいに真面目な表情に変わり、こんなことを問い掛けてくる。


「……ねぇ先輩、どうして淳一さんは恋愛対象外なんですか?」

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