彼の瞳に独占されています
「そんなことないですよ。初めて空気を吸った日なんだって思うと、月に降り立ったくらいすごいことじゃないですか!? だから、いくつになっても誕生日は特別です」


得意げに言い切ると、こちらを向いて一瞬キョトンとした永瀬さんは、ぷっと吹き出した。


「そんなふうに考えたことなかったよ。長谷川さんは面白いな」


おかしそうに笑う彼を見て、少しドキリとしてしまう。永瀬さんはいつも大人で紳士的な印象だから、たまに無邪気な笑顔を見せられるとダメなのよ。

むず痒くなる胸を宥めつつ、カップケーキの箱を閉めていると、ふとある考えを思い付く。


「そうだ、お祝いに皆でご飯でも行きませんか? 最近集まる時なかったし」


ここのスタッフが仕事以外で全員集まる機会はあまりなく、お花見をしたのが最後。それなりに仲は良いし、久々にわいわい食事ができたらな、と思い提案してみたのだ。

しかし、永瀬さんは何かを思案するように腕を組む。


「あぁ、それもいいんだけど……」


どことなく歯切れの悪い言い方を聞いて、はっとあることに気付いた。

もしかしたら、彼女のことを気にしているのかもしれない。ちゃんとそのことも考慮していると言っておかなきゃいけないよね。

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