彼の瞳に独占されています
「あ、行くとなったらちゃんと日は改めますよ! 今日は彼女さんと過ごすだろうし……」

「え?」


永瀬さんは、意味がわからないというようにキョトンとするものだから、私も同じ顔をして、「え?」と返す。

あれ、彼女にお祝いしてもらうんじゃないのかな?

ほんの数秒、私達の間の空気が止まったように思えた後、永瀬さんの口から思わぬ一言が飛び出した。


「僕、今は彼女いないけど」

「…………えぇぇ!?」


目をまん丸にする私の叫び声が、事務所内に響き渡った。

な、何で……いつ別れていたの!?

驚く私に、永瀬さんはさらりと告げる。


「もう半年も前に別れたよ。はっきりとは言ってなかったけど、皆噂好きだから誰かの耳に入ってると思ってた」

「た、たぶん皆知らないんじゃないかと……」


彼の言う通り、誰か知っていたら私にも流れてくるはずだから。まさか、そんなに前に別れていたなんて!

ぽかんと口を開けていると、永瀬さんはふっと笑みを浮かべて言う。


「僕がさっき言いたかったのは、食事に行くなら長谷川さんとふたりがいい、ってこと」


──え?

予想外すぎる発言が耳に飛び込んできて、私はさらに目を見開く。


「誕生日プレゼントに、君との時間をくれたら嬉しいんだけどな」


少しいたずらっぽい魅惑の笑みを向けられ、ドキン!と心臓が飛び跳ねた。


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