彼の瞳に独占されています

 * * *


一階のインフォメーション近くのコーナーに、笹の葉に吊された色とりどりの短冊が揺れている、七夕の今日。

私の心も、ぶら下がったようにどこか心許なくゆらゆらしていた。


昨日、永瀬さんから突然食事のお誘いを受け、軽くパニックになった私は何の返事もできなかったのだけれど。

『急にこんなこと言っても困るよな。でも、君をからかったりしてるわけじゃないから』

と、彼は優しくも真剣な眼差しで言ってくれた。

この予想外の好意は、どう受け止めたらいいものか……。


昨日の永瀬さんの表情や声を鮮明に思い返しながら、ぐるぐると思いを巡らせて、棚に置かれたネクタイを撫でていると、私の隣に誰かがぴたりと身体を寄せる。


「先輩。先輩の売場はここじゃないですよ」


耳元でボソッと囁かれて、はっと我に返った。

据わった目で見てくる弥生ちゃんに、「あ、あぁそうね!」と、ぎこちなく笑ってみせる。

いけないいけない、今は仕事中。ネクタイを探していたお客様を、弥生ちゃんがいる雑貨コーナーに案内したんだった。

私情は持ち込まないようにすると決めたはずが、また私はぼーっと他のこと考えて、別の売場までウロウロして!

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