彼の瞳に独占されています

水族館を出て、まだ空が暗くなりきる前にやってきたのは、大きな窓から高い天井とオレンジ色の明かりが見える、おしゃれな一軒家レストラン。

永瀬さんのお気に入りだというそのフレンチレストランは、店内もアンティーク調のインテリアが落ち着いた雰囲気を醸し出していて、とても素敵だ。

小さく感嘆の声を上げながら、案内された席につく。テーブルクロスの上には、一輪挿しに可憐な花が品良く飾られていて、乙女心をくすぐられた。


こんな女子が喜びそうなお店を知っているなんて、さすがだ。これが淳一だったら……ガード下のおでん屋とかに連れていかれるんだろうな、たぶん。

あいつとは違う、完璧な彼がメニューを開くのをぼうっと眺めていると、こう問い掛けられる。


「萌ちゃんはたしかそこそこお酒強かったよね。美味しいワインがあるんだけど飲んでみる?」


そこそこというか結構飲める方だけど、それはあえて言わないでおこう。

いつも安いワインしか飲まないし、永瀬さんのオススメがあるなら気になる。「じゃあ、せっかくなので」と言って、料理と一緒に頼んでもらうことにした。

すぐにウェイターさんが持ってきてくれたのは、綺麗なルビー色をした赤ワイン。微炭酸らしく、グラスに注がれるそれは小さな気泡を上らせていた。

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