彼の瞳に独占されています
永瀬さんもフォークを手にすることなく、重そうな口を開いた。


「前付き合ってた彼女が、“お姫様気分を味わわせてほしい”っていう感じの子だったんだ。僕の経済力とか、肩書きとか、そんな上辺だけのものを求めてる子だった」


──ドクン、と重い音を立てて心臓が揺れ動く。

上辺の条件を気にしていた、今までの自分のことを言われているようで……耳が痛い。


「彼女が喜ぶから、いいレストランやプレゼントを探したり、常に紳士的でいるように心掛けてた。でも次第にわかってきたんだよ。彼女が欲しいのはそういうことをしてくれる男で、僕の中身はたいして重要じゃなかったってことが」


淡々と話す彼の口角は上がっているけれど、その表情はとても悲しそう。


私が永瀬さんと親密になりたいと思ったのは、彼が持っているスペックが理想的だったから。肝心な“好き”という気持ちは、後からついてくるかもしれないと期待していた。

決して上辺だけ良ければいいと思っているわけではない。でも、私も永瀬さんの元カノとたいして変わらないんじゃないだろうか。


そういう相手の選び方はやめようと決めたはずだったのに……結局私はダメ女のままだ。

自己嫌悪して俯いていると、永瀬さんは空気を変えるように笑う。

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