彼の瞳に独占されています
そして、こちらに手が伸ばされたかと思うと、髪がそっと掻き上げられ、ピクンと肩が震える。


「……いつの間に、こんなに君を好きになってたんだろうな」


突然“好き”という単語が私の中に飛び込んできて、心臓が大きく跳ねた。

見開いた瞳に、情熱を湛えた彼の凛々しい表情が映る。


「萌ちゃんのことは、入社した頃から気に入ってたよ。それがいつ恋に変わったのかわからないけど、彼氏と別れたって知って、もう自分の気持ちを止める必要はないんだって思ったら、どんどん君の存在が大きくなってた」


見つめ合ったまま、「好きだ」と、もう一度はっきりと告げられた。

本当に、私なんかのことを想ってくれているんだ……。温かな感動が、じわじわと湧き上がってくる。


今までの私なら、自分に確固とした好きという気持ちがなくても、きっと何も迷うことなくOKしていただろう。

でも今は、それじゃいけない気がする。

私は永瀬さんに相応しいような、心の綺麗な女じゃない。ズルい人間なんだと、ちゃんと言っておかなくちゃ。

一度目を伏せて息を吸い込むと、ゆっくり口を開いた。


「……私、カッコ良くて経済力がある人がタイプで、これまでの恋愛ではそういう人を選んでました」


予想外だったのだろう、永瀬さんの瞳がわずかに揺れる。

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