彼の瞳に独占されています
◇ふたりの間を繋ぐもの
結局、永瀬さんの告白に対しては、少し考えさせてほしいと保留しておいた。
翌日、職場で会った時はやっぱり気まずかったけれど、大人な彼の態度はいつもと変わらない。仕事中はもちろん、休憩中も私を“長谷川さん”と呼んで、皆に何かあったと気付かれないようにしてくれている。
弥生ちゃんにも永瀬さんとのことを報告すると、『まさか、キスまでされたのにOKしてないなんて……!』と、心底驚いているようだった。
まぁ、誘われたらホイホイついていってしまっていたこれまでの私の恋愛模様を見ていれば、驚くのも無理はないだろう。
自分でも、永瀬さんの告白に対して、どうしてあまり乗り気じゃないのかわからない。彼はこんな私でもいいと言ってくれたのだから、素直に甘えてしまえばいいのに……。
もやもやしたまま過ごすこと数日、今私はセールの準備で七階の催事場に荷物を運んでいる。
エレベーターの扉の前で床に重い段ボール箱を置き、四階に到着するまで待っていた。階数の表示が上がってくるのを見て、「よっこらしょっ」と言いながら、段ボール箱を持ち上げようとしたその時。
「年甲斐ねぇな」
そんな一言が聞こえてきたと同時に、ふっと段ボール箱が軽くなった。